好転反応と揉み返しの違い

好転反応は……
「身体の老廃物が流れ出したり歪んでいた箇所が戻ることによって起こるとされているもの。痛みや頭痛、怠さや吐き気が出るが一時的なので安心していい」
多くの健康系webサイトではこのように説明されています。老廃物が流れ出たり歪みが戻ると痛みや吐き気などが一時的に出るとのこと。
揉み返しは……
「施術箇所が施術前より痛くなる。頭痛・吐き気・怠さが出て余計ひどくなる」
同じく健康系のwebサイトを調べると好転反応と違って揉み返しは圧倒的にダメなものとして説明されています。
ちなみに「揉み返し」は微細な筋断裂が原因です。外部からの衝撃で筋細胞に傷がつくことで痛みを起こします。筋細胞は強めのマッサージを受けた場合や筋線維を横断するような力がかかると簡単に傷つきます。
その修復過程において傷ついた細胞の周辺で軽い炎症反応が起こるため「痛み」と「熱っぽさ」が出ます。
また肩や首のまわりで炎症反応が起きると肩こりが余計酷くなったように感じられるし、肩や首に腫脹という炎症反応による腫れが出れば頭痛も起こり得るんじゃないかと思われます。
それぞれ言い方は違いますけど

結局同じこと言ってません??
ただの言い訳(嘘)です
ひと昔前と違って現在は記載内容が変わってきた傾向にありますが少し前までは好転反応は良くなるサインで揉み返しはただのダメージ。「好転反応」と「揉み返し」は真逆ということが書かれていました。
そして今もそのような記載を多く見ます。
好転反応として差し支えないものとしては「眠気」「軽いダルさ」ぐらいです。痛みが出たりするものは基本的には全部揉み返しです。
ちなみに「揉み返し」を起こしても過剰とはいえ適切な場所に刺激が入っていれば一時的に体が悪くなったとしても一定の効果が見込める場合があります。そのため少し経つと良くなることもあるでしょう。こういったものを「好転反応」と言っている可能性もありそうです。
それっぽく書かれているサイトなどでは「老廃物」や「歪みが戻る」ことで痛みが出るみたいなことが書いてありますが、疲労物質が血管に多く流れたり歪みが戻ることが原因で痛みが出るというのは解剖学や生理学から見ても破綻している気がします。

実は厚生労働省で「好転反応という言葉に科学的根拠はない」とハッキリと明言されています。
それでは何故「揉み返し」を「好転反応」として言い換え、そして「良いものである」としたのか。
それは健康業界における「揉み返しは術者の熟練が足りないと広く認識されたから」です。
揉み返しが起きたときに「これは施術者の腕が悪いから」と言われてしまったら悪い評判を呼んでしまい商売になりません。そのため施術者は言い訳を考えます。そこで生まれた言い訳が「好転反応」です。
ちょっとした力加減の間違いで起きてしまった揉み返し。それを何とかして無かったことにしようと頑張ってした言い訳(老廃物や歪みが戻った等)に説得力があったのでしょう。それが便利な言葉だったため徐々に「好転反応」という言葉が広まっていって「揉み返し」との区別が難しくなったと考えられます。
東洋医学との融合
ちゃんと調べたわけじゃないので僕の考えになってしまうのですが元々「好転反応」という言葉を使っていたのは我々のように東洋医学を用いる業界ではないかと思います。
なぜかといえば東洋医学では「いったん悪くさせる」という手法が取られる場合があるからです。
例えば吐き気があった場合には吐き気を抑えるのではなく、あえて吐きやすくして、早めに吐かせることで問題を解決する手法をとる場合があります。狙って吐かせているのですが、ある一面を見れば吐き気を悪化させていると取ることもできます。
吐き気がピークに向かう過程を患者さんが不安にならないよう「良い反応」と説明をすることはあり得るんじゃないかと思います。
こんな感じで東洋医学で用いる説明と揉み返しの言い訳が融合し「好転反応」という言葉が出来上がっていったんじゃないかと考えています。
技量か知識が不足している恐れがあります
これまでに説明した通り、好転反応は便利な言い訳として使われる側面があります。
ただのマッサージで痛みが出て「好転反応だから安心してください」というような説明をしてくるお店は生理学や一般臨床の知識など人体に対しての知識が不足していると思って良いでしょう。
繰り返しになりますがマッサージや整体で「好転反応」としても差し支えないのは「眠気」と「軽い怠さ」ぐらいです。痛みが出るものに関しては全て体に触れる強さや方向、場所、運動強度のいずれかが間違っていると判断できます。
言い訳を何度もしなければならないようなところは、その方に合わせた強さを選べない未熟な術者が多くいる可能性があるので、そういったお店は避けた方が無難です。
ちなみに偉そうに語ってきた当院でも「揉み返し」を起こしてしまうことはあります。
数は少数ですが万を超える施術をしていると中に極端に刺激に弱い方がいて、強さを確認しながらマッサージをしていても揉み返しとなってしまうケースもあります。
どんなに熟練しても絶対に揉み返しを起こさないとは言い切れません。ですがその確率を知識と技術で減らしていくことは可能だと思っています。当院は少なくとも「好転反応」という言い訳をしないで済むぐらいの技術は持っているつもりでいます。
一度でも揉み返しを起こしたことがある方は事前にお伝えいただくとより気をつけて施術できますので、施術前に「揉み返しを起こしたことがある」と話をしてみるといいと思います。そして押される圧がちょっと強いなと思ったら絶対に我慢しないで「もう少し弱く」と施術者に伝えましょう。伝えても強く押される場合はそこのお店に通うことをやめたほうがいいです。
自分の身を守れるのは自分だけです。
今回のお話は以上です。
このブログでは肩こりや腰痛にお悩みの方が少しでもラクになるような情報をお伝えしていきます。次の記事もご期待ください。
免責事項的なやつ
基本的に情報は精査した上で提供いたします。だけど、医学的、科学的根拠に欠ける自分の経験上の話なども含めることが多々ありますのでご容赦ください。
また掲載したセルフケアを行うとき、痛みが出る、痛みが増すようなことがあれば直ぐに中止して、医師の診断を受けてください。これを読んで実施したから症状が悪化したという場合も責任を負うことができないので、その辺だけは十分に注意してください。