この疑問や意見は結構多いです。
マッサージの国家資格は取るだけ無駄なの?
無資格でやれるならそっちの方が得じゃん!
そんな感じのことに対して自分の考えをお伝えします。

コンビニの約2〜3倍の数があるという治療院(整骨院・鍼灸院・マッサージ院・整体院など)

政府や地方自治体が創業者を支援する融資制度などを使ってお店を出しやすくなったことや初期投資が他業界よりも低いこと、「マッサージ」という言葉を使わず「リラク」「もみほぐし」という名前にすれば摘発されることがほぼほぼないことなどを背景にお店の数は激増しました。

じゃあ自分もやってみようと思った方がいるとしたら「絶対やめておいたほうがいい」です。

法律は守るべき

当たり前のことを言いますが法治国家である日本においては「法律は守るべき」です。

日本には様々な法律があり、その内容を知っている知らないは置いておいても、大抵の人は法律に違反してはいけないことを認識しています。そのはずなのに違反しても問題ないとされているものがあります。

それがあん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律です。
※法律だとマッサージじゃなくてマツサージなんです。なんでなんだろ。

この法律の第一条には『医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。』という記載があります。

平たく言えばお医者さん以外でマッサージとか指圧で商売しようとするなら国が認めた免許を持ってないとダメだよってことです。説明してあげれば小学生でも理解ができるはずのこの法律。

それなのに街中にマッサージや指圧をするお店がたくさんあって、そのほとんどが「あん摩マッサージ指圧師の免許」を持ってないという不思議なことが起こっています。

髪を切るのが上手いだけの人が勝手に無免許で髪を切れば処罰されます。お医者さんじゃないのに外科手術などをした場合はニュースでも大々的に取り上げられる大問題になります。

でもマッサージでは問題になるどころか見逃されるのです。

『マッサージ 資格』で検索をかけると

国家資格を持っていない方が行う施術はリラクゼーションやもみほぐしで、身体の疲労を回復させるのを目的としています。マッサージや指圧は医療行為の一部であり身体の治療が目的。医療行為となる施術は国家資格が必要です。

同じ指圧を用いたマッサージ。有資格者が行うと医療行為。無資格だとただのリラクゼーションやもみほぐしになるとのこと。

本気で1分ほど考えましたが意味がわかりませんでした。トンチか何かなんでしょうか。

疲労の回復も十分医療行為に該当しそうですけど…。

「指圧やマッサージをするには免許が必要」という第一条はどこに行ってしまったんでしょうか?

無資格の人が指圧やマッサージをするのはどう言い繕っても法律違反。さらに「腰痛」「肩こり」などの症状の緩和を売り文句にしているお店もいっぱいあるのでこれも法律違反。

ただ無資格で営業している悪質な業者たちが「リラクゼーションやもみほぐしなら資格がいらない」と言い張るのには理由があります。

昭和35年の最高裁の判決で『人体に危害を与えず、保健衛生上何らの影響も与えないような医業類似行為を業とすることは、職業選択の自由の範囲内である』とされた例があり、多くの無資格マッサージ業者たちはこれを盾にしているわけです。

人体に危害を与えず保健衛生上何らの影響も与えない

人体に危害を与えない

警察が厚生労働省に問い合わせを行い「自分の体重をかけて押す」ようなマッサージ行為は「人体に危害を与え得る」という根拠を以って逮捕に至った例があります。

確かにまったく圧をかけずに優しくさするぐらいであれば人体に危害を与えないと思われますが、そんなお店には出会ったことがありません。あったとしても「もっと強く押して!」という要望が溢れそう。

「治療などの医療行為ではありません」とわざわざ注意書きをした上で「人体に危害を与え得る」強さでの違法マッサージがされているのが現状です。

保健衛生上何らの影響も与えない

保健衛生の定義は「個人および社会公衆の健康の保護・増進と疾病の予防を行うこと」とされています。

リラクセーションは緊張を緩和させることと定義されていますが、緊張を緩和させることは健康の増進に繋がることは広く知れ渡っています。新聞・雑誌・TV番組でもリラックスと適度な運動が健康の秘訣!みたいなことを言っているのを聞いたことがあると思います。治療じゃなく、リラクであってももみほぐしであっても「何らの影響も与えない」とは言えないのです。

そもそも「もみほぐし」を意味する固有名詞が「あん摩」なので言い換えてもダメ。

『人体に危害を与えず、保健衛生上何らの影響も与えないような医業類似行為を業とすることは、職業選択の自由の範囲内である』

確かに危害を与える可能性がなく健康増進に関係ないものであれば職業選択の自由の範囲内になるでしょう。しかし「人の体に触れて何かをすること」は暴力等でない限りはほとんど健康の保護・増進、疾病予防になり得るため、業として行うためには資格が必要になります。

以上のことから

実際のところ逮捕される事例が少ないのでセーフ。

というわけではないし法律的に許されているわけではないのです。

ごく簡単にお伝えするのであれば「違法だけど見逃されている」と考えておくべきです。

別な言い方をすれば「いつでも処罰できますよ」ってことです。明日突然逮捕されるかもしれない。そんな生殺与奪を他人に握られているような緊張感を持って日々違法業務に励まなければならないのは苦痛だと思うんです。

あとはたぶんですけどもう商売にならない

理学療法士や柔道整復師も整体業界に参入をしてきている今、完全無資格で民間の整体学校だけの知識や技量で何とかできるほど甘くないです。しかも国や厚生労働省は国家資格を持っているかどうかをちゃんと見極めるように周知を始めています。

※厚生労働省による「無資格者によるあん摩マッサージ指圧業等の防止について」の周知

今後厚生労働省がどのように舵取りをしていくかわかりません。なんだかんだ相当悪質ではない限り急に逮捕されるというわけではなさそうですが、資格の有無を確認した上でお店に行くかどうかをお客さん自身に委ねてきているのが今の流れです。既に「無資格=危険」と認識されている方も多くお見かけします。

無資格でお店を出すというのは逮捕のリスクもある上に、危険と判断されたらお客さんすら集まらない。

いいことは一個もないような気がします。ってことで「あん摩マッサージ指圧師という国家資格が必要ない」とは考えにくいです。

国家資格を与えればいいのに

無資格マッサージや整体の全て糾弾したいわけではありません。ちゃんと体のことについてしっかりと勉強して「事故なく施術を終えられる」という最低限の安心は担保すべきじゃないかと考えてこの記事を書きました。

逆にいうと事故を起こさないように生理学や解剖学、運動学などをちゃんと勉強した人であれば国家試験を受けてもらって国家資格を与えればいいのにと思っています。

カイロプラクターは海外ではカイロドクターとして医師と同等の資格になっています。しかし海外でカイロドクターを取得した人が日本でお店を開こうとすれば「ただの違法な整体」です。

病院においてリハビリなどを担当してくれる理学療法士。医師の指示のもとであればマッサージ等を行うことができますが、これも独立開業してしまうと指示してくれる医師がいなくなるため国家資格が生かされずに「ただの違法な整体」になってしまいます。

僕は「ベースとなる人体の知識」があれば整体として開業できるとすべきじゃないかと思っています。

あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律の裾野を大きく広げて、柔道整復師や理学療法士でも整体を開業することができるようにしたり、数年の勉強+国家試験の合格でカイロプラクターやタイ古式マッサージなどでも整体業として開業できるようにした方がいいんじゃないかと思います。

そして何の知識もなく数日だけの研修をしたような人間がマッサージをするようなことがないようにすべきだと思うんですが、国の偉い人。どうですかね?

Q&A

Q. 無資格者がマッサージ行為をするとどのような処罰がされるの?

A. あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律第13条の5により、無免許で業をなした者は50万円以下の罰金に処せられます

Q. マッサージではなく「もみほぐし」という名前なのでセーフでしょ?

A. 名称ではなく行為が問題となります。どのような名称でも実際の行為がマッサージと同じものであればマッサージとみなされるのでアウトです。美容理容免許を持ってない人が「髪切り屋さん」って名前にして髪を切ったらアウトなのと全く一緒です。

Q. 実際のところ摘発されるの?

A. 摘発事例も少しずつですが全国的に増えています。印象的な事例では2004年1月に神奈川県警により無資格マッサージ師を派遣した会社が摘発されています。派遣会社の社長と無資格マッサージ師が逮捕されています。「リラクゼーションやボディケアでありマッサージではない」と容疑を否認しましたがマッサージの定義を厚生労働省に照会し「体重をかけ対象者が痛みを感じる強さで押す行為」との回答を受け、摘発に踏み切ったという事例があります。

Q. いろんなサイトに書いてあるけど「慰安目的の施術」だったら資格いらないの?

A. 本来的には慰安についても身体に影響を及ぼす行為に該当すると考えられるため資格が必要です。検挙された例では体重をかけて押すような行為をしていて摘発されています。

Q. 人体に危害を加えなきゃ無資格者が業務としても罰せられないってホント?

A. 検挙事例から考えると無資格者が業務として行うと罰せられる施術の線引きは「体重をかけて押す」というラインのようです。例えば少しでも痛みを与える可能性のある施術はアウト。正直なところさするぐらいしかできないんじゃないでしょうか。

最後に

治療院経営ラボさんの「治療院の広告規制と無資格問題」というページがとても綺麗にまとまっていたのでリンクさせてもらいます。

僕が書いたものよりずっとわかりやすいです。自分の書いたものを読み直してみると何の資格もなく営業されている方から「クソみたいな反論がいっぱいきそう」な内容になってしまいました。

でも、法律や判例を無理やり拡大解釈して違法性を正当化するだけではなく、事故を起こしたり、マッサージと称して風俗営業をするなど、本来の国家資格保持者の社会的な地位を損なう行為を見過ごすことができません。

何よりお受けいただく方々の健康及び安全のための法律が守られないことに対しては本気で怒りすら覚えます。

有資格者でも事故は起きます。人体に触れて操作して癒すことは本当に難しいんです。操作を誤ったら半身不随となる後遺症を与えたり死亡事故を起こす可能性すらあります。だからこそ法律で守るべきだと思うんですが「資格はいらない」と堂々と宣伝しているようなページを作っている方は本当に反省をしてほしいです。また「資格がいらない」と考えている人は、お受けいただく方々の健康は何にも代え難いものであることを意識してもらいたいと思っています。

整体やマッサージに行ってみようと思われている方はせめて柔道整復師でもいいし理学療法士でもいいのでちゃんと国家資格を持っている先生に施術をしてもらいましょう。

商売としてやってみたいと考えている人で「お金儲け」だけを考えているなら、そんなに甘い商売ではありませんし危険なので即座にやめましょう。そうじゃないなら3年間勉強して国家資格を取りましょう。

まとめ

  • 法律は守りましょう
  • 資格がいらないという情報には疑問を持ちましょう
  • 大昔の判例に頼るのは危険ですよ
  • 問題がないのではなく問題はあるが見逃してくれているだけ
  • 無資格マッサージが問題視されていることを知りましょう
  • 国家資格なら何でもいいけど体のことを勉強した人に安全に施術してもらいたい
  • 色々言ってもダメなものはダメ。逮捕されるよ
  • 無資格は「整体」も「マッサージ」も絶対ダメ


今回のお話は以上です。

当院は渋谷区の幡ヶ谷にあります。お近くの方で身体の調子が悪くなってしまったときは相談だけでも大丈夫。少し離れているところは出張もありますのでお気軽にお問い合わせください。

このブログでは肩こりや腰痛にお悩みの方が少しでもラクになるような情報をお伝えしていきます。次の記事もご期待ください。

免責事項的なやつ

基本的に情報は精査した上で提供いたします。だけど、医学的、科学的根拠に欠ける自分の経験上の話なども含めることが多々ありますのでご容赦ください。

また掲載したセルフケアを行うとき、痛みが出る、痛みが増すようなことがあれば直ぐに中止して、医師の診断を受けてください。これを読んで実施したから症状が悪化したという場合も責任を負うことができないので、その辺だけは十分に注意してください。